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メディコム・トイ≒トイ×アート×ファッション。

メディコム・トイ≒トイ×アート×ファッション。

メディコム・トイ代表取締役社長 赤司竜彦の頭のなか

2019.08.05

「メディコム・トイ エキシビション '19(MEDICOM TOY EXHIBITION '19)」が7月20日から7月25日まで、表参道ヒルズのスペース オーで開催されました。2016年、本館2Fに直営店の「メディコム・トイプラス(MEDICOM TOY PLUS)」がオープンして以来、表参道ヒルズでは4回目の開催となる本イベントは今回も初日から国内、海外より訪れた多くのファンの熱気で包まれました。

今年で設立23年を迎える同社の新製品展示会ともなるこのエキシビションは、既に発売された商品から現在開発中のものまで、メディコム・トイの"今"を知ることのできる数少ない場。そのためコアなファンから一般のお客様まで年々来場者数は増え(初日と2日目は入場制限が行われるほど)、たちまち表参道ヒルズの夏のイベントとして定着したエキシビションです。

令和の新しい時代に向けた今回のエキシビションやメディコム・トイの人気の秘密を、シーンの火付け役であるメディコム・トイ代表取締役社長の赤司竜彦氏にインタビューしました。

---- 今回の「メディコム・トイ エキシビション '19」はどのようなものになりましたか?

メディコム・トイ代表取締役社長 赤司竜彦(以下、赤司) : まずはスター・ウォーズのアーカイブですね。そして私たち(メディコム・トイ)の商品群が多様化していることを感じていただけたかと思います。特にこの1〜2年はさまざまなチャネルからお声を掛けていただくようになって、これまででは考えられないような先様と組むようなことが起こっています。

「メディコム・トイ エキシビション '19」会場

「スター・ウォーズ」シリーズのアーカイブ 
© & ™ Lucasfilm Ltd.

---- 例えば、どんなパートナーとでしょうか?

赤司 : 例えば郵便局などですが、不思議な組み合わせの点と点を結びつけることで新しいコンテンツやソフト、流通というものまで作って行ければという思いがあります。そのため、スニークプレビュー(注:映画の題名や監督、内容を知らさない覆面試写会)のようなものもありました。内緒なのでどれがそれかは言えませんが(笑)、お気づきの方がいらっしゃったかもしれません。数ヶ月後には発表するものです。

---- 今回のエキシビションに掲げられた「トイ」「フィギュア」「アート」「ノージャンル」「ノーボーダー」「ワールドワイド」「興奮」「待望」「共鳴」「高揚」といったキーワードに込められた思いをお聞かせください。

赤司 : 国民すべてに愛されているようなキャラクター、例えばクレヨンしんちゃんやドラえもんなどですが、それらに対しても、「これなんですか?」っていうような誰も知らない作家に対しても、私たちが商品に注いでいる愛情の質は同じ。何も変わっていないんです。手にとっていただけるお客さんが変わるだけで。(商品に対する)私たちの情熱や方向性、コンセプトはこれまでとあまり変わっていない、というのが正直な気持ちで、それがこのキーワードにも現れています。何を作ってもメディコム・トイが作ったものになるというのは当たり前の話で、クレヨンしんちゃんしか知らない方には、あまり世に知られていない作家の良さを知ってもらいたいし、その逆もまたしかりです。

---- 商品群が多様化しているというのは、キャラクターの幅が広がっているということですか?

赤司 : そうですね。キャラクターの幅が広がっているのも確かですし、洋服やスケートボードなどアイテムやフィギュア自体の幅が広がってもいます。それと特に最近は商品流通の幅が広がっています。なかには一店舗でしか扱わない商品から、世界中の高感度なセレクトショップなどだけで扱う商品や、数千店舗で販売している商品までさまざまです。

例えば、ドラえもんの小さなフィギュアはほぼどこの店舗でも購入可能なのですが、「彫刻家ドラえもん」という大きな商品は「THE ドラえもん展」(2017年東京・2019年大阪開催)の会場と弊社の直営店でしか買えない。このように商材の特性や方向性から考えて、この商圏で展開するのがコンテンツとして一番ハッピーだろうという私たちの思いから、販売先をチョイスさせていただいております。

「彫刻家ドラえもん」 
©Fujiko-Pro

表参道ヒルズ本館2Fの「メディコム・トイ プラス」も、"世界で表参道ヒルズだけ"という特別感を感じていただけるよう販路を絞り込んだアイテムに出会える場所のひとつです。そういったある意味自由にやらせてもらっている部分を「メディコム・トイは何をやるかわかんないなぁ」的な面白さとして感じてもらえれば嬉しいです。

本館2F「メディコム・トイプラス」店内
© Universal City Studios LLC. All Rights Reserved.
SPACE JAM and all related characters and elements © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc.(s19)
© 2019 Viacom International Inc. All Rights Reserved. Nickelodeon, SpongeBob SquarePants and all related titles, logos and characters are trademarks of Viacom International Inc. Created Stephen Hillenburg.
Ⓡ, TM, © Kellogg Co.
© DreamWorks Distribution Limited. All rights reserved.
© 2019 Peanuts Worldwide LLC
© Disney
Planet of the Apes ™ & © 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

---- エキシビションも毎回行列が出来て、発売される商品も即完売。ショップへの入店規制など、かつての裏原ムーブメントにあったような熱狂的ブームを"アートなトイ"によって作られているのが御社だと思うのですが、アートとメディコム・トイの関係をどう考えていらっしゃいますか?

赤司 : 会社を始めた頃は、こんなにコンテンポラリーアートと接近していくとは考えていませんでした。最初は原宿にある色々なアパレルメーカーからフィギュアを作ってくれ、と言われたことが起点だったと思います。それから井上三太さんと『TOKYO TRIBE』という作品でご一緒するようになって、そのフィギュアが「A BATHING APE®」のTシャツを着ていたりしたことが、ストリート系で注目され出した始まりだったのではないでしょうか。

その流れからKAWSが来るようになり、KAWSはコンテンポラリーアートで現代のアンディ・ウォーホールって呼ばれるくらい有名になってしまった。おもちゃともアートピースとも思わず、彼との共同作品として作っていたフィギュアがいつしかサザビーズで信じられないような価格で落札されるような状況になったわけです。私たちからコンテンポラリーアートに近づいた印象でもなく、アートを嫌っていたわけでもなく。ごく自然体にやってきたのが現在の状況です。

今後この先、発表されるものを見ていただいても、「なんでこんな不思議なものを企画しているんだ」というようなものも出てくると思います。ただ海外の美術館からもさまざまなお話しが来るようになって、私たちが作るモノに対して一定の評価をいただけるようになったのではとは思っています。そこに外連味はないんですよ。「私たちの商品はおもちゃじゃなくってアートだ」とも思っていないです。おもちゃはおもちゃで良いんじゃない、って思っています。

右から2番目:BE@RBRICK Barry McGee 100% & 400%
右から3番目:BE@RBRICK Ryan McGinness 100% & 400%
© Ryan McGinness / Artists Rights Society (ARS), New York

---- 「自分たちが欲しいものを作る」っていうことを、ずっとおっしゃっていますね。

赤司 : 本当に自分が好きなモノしか作ってないんですよ、この23年間。この商品を世界で権利取って儲けようとも思っていないし、沢山売れそうだから作ろうっていうのも、それは自分たちでやらなくても良いのでは、と思ってしまう。逆に自分たちしか出来ない、それを作ることによって新しい扉が開くようなものづくりを目指しているところはありますね。今まで(そのコンテンツに)興味なかった人がそれによって振り向いてくれたりすると嬉しいです。

---- その赤司さんのクリエイティブに関するルーツは何ですか?

赤司 : 私の場合は80年代ニューウェーブなんです。カッコイイとか、何かスカしている、あの感じですね。ファッションやカルチャーも当時のものが好きですし、そのころのカルチャーに影響されているブランドやデザイナーと仕事をすることも多いです。実は現在の本社ビルは元々、(80年代のDCブームを牽引した)松田光弘さんのニコルのビルだったんです。購入した経緯もその理由だったからかもしれません。

---- 今回、BE@RBRICKでもコラボされているsacaiやフラグメントデザインの藤原ヒロシさん、ダフト・パンクなども80年代カルチャーの色が濃いですものね。

赤司 : 面白いのはその80年代ニューウェーブに影響を受けている20代後半から30代前半のニューエイジのクリエイターが出始めていることですね。彼らの作るファッション、東京だとサルバム(salvum)やベッドフォード(BED J.W. FORD)は個人的にも大好きです。ヴィサージ(Visage)のスティーブ・ストレンジ(Steve Strange)が着てそうで、なんて言っても誰も分からないですよね(笑)。

中央:BE@RBRICK × Lewis Leathers 100% & 400%
左から3番目:sacai × BE@RBRICK 100% & 400%
© Lewis Leathers

---- 分かります。ロンドンのワグクラブやブリッツの時代ですよね。メディコム・トイのクリエイティブにもファッションの影響は受けているのでしょうか?

赤司 : そうですね。ファッションの影響は大きいです。コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)やイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)グループ、JUNグループなど80年代からサバイブして残っていらっしゃるブランドやアパレルさんをみても、「生き残れるのは強いものでも賢いものでもなく、変化し続けるものだけだ」というダーウィンの言葉、そのものだと思います。私たちもそうありたいと思っています。

---- 渋谷がホームタウンでキデイランドに子どもの頃よく行かれていたということを聞いたのですが?

赤司 : 何度か転校はしましたが、千駄ヶ谷の小学校に通っていました。当時、ラフォーレ原宿の場所は教会だったんですよ。子供の頃、シスターの格好が怖かったので良く覚えています。ですから、表参道ヒルズのある渋谷区には地元という意識はあります。キデイランドは大好きで毎日のように行っていましたね。当時、祖父がニホンザルを飼っていて、そのサルに連れられて。本当ですよ。さらにオオサンショウウオも飼っていて、それが良く逃げ出すんですよ。千駄ヶ谷の歩道を歩いているのを捕まえに行っていました。のどかな時代でした。

---- メディコム・トイを立ち上げるに至った赤司さんのルーツをお聞かせください。

赤司 : アメリカのおもちゃを集めていくうちに、自分が欲しいものを作りたくなったというのが、動機でしょうね。おもちゃ自体は小学生の頃から集めていたのですが、本格的に集め出したのは20代前半にIT系ベンチャー企業に役員でヘッドハンティングされ、収入は良かったのですが休みがなくて、その鬱憤でおもちゃを買うことにぶつけていたということでしょうか。その内に私ならこう作るのに、という思いがふくらんでいったんです。

---- 起業した当時、将来的に今の姿は想像されていましたか?

赤司 : まったく想像できていませんでした。結果的にジャズミュージシャンのインプロヴィゼーションのようなものでした。そこにいるメンバーと楽器によって音も変わるし、メロディーもリズムも変わるけれどその場その場でセッションしてきた感じです。スヌーピーの作者チャールズ・M・シュルツの言葉では無いですが、私たちは常に「配られたカードで勝負するしかない」状態で、そのときに自分の中にあるカードで最大限の勝負をしようといつも思っています。それはこの先10年後も同じで、予想がつかないというのが正直な気持ちです。

---- これまで販売されて思い出に残っている商品はありますか?

赤司 : 面白かったのは2006年から5年ほど展開していたファッションブランドで、自分のデザインしたジャケットをシャネルのショーのフィナーレでカール・ラガーフェルドが着てくれたというのが驚きでしたね。ファーストシーズンのコレクションで、展示会でそのジャケットのオーダー自体は3着しか付きませんでした。その内の1着がコレットのサラのバイイングで、それをカールが購入したらしくって、それでファッションの魅力にとりつかれた感じはありますね。伝わる相手には伝わるんだ、という。

---- 「メディコム・トイ エキシビション '19」で販売されたKNIT GANG COUNCILの『時計仕掛けのオレンジ』や、INUの『メシ食うな』などファッションアイテムへの展開にも驚かされました。個人的にはメディコム・トイにはアパレルのイメージがあまりなかったのですが?

赤司 : (アパレルをあまり前面に打ち出していないのは)トイメーカーであることが一番自由だからかもしれません。他の業種や業態と比べる訳ではないのですが、実はおもちゃっていうのは安く、いかに楽しく、いかにいろいろな素材を使い分けてモノを作るかという集大成なんです。プラスティックやレジン、木をこれだけのロットだったらこれだけの金額で販売できるというような因数分解でものを作っていくので、そこのポジションからは、離れたくないという気持ちはあります。

左:INU『メシ食うな』
右:KNIT GANG COUNCIL『時計仕掛けのオレンジ』
A CLOCKWORK ORANGE and all related characters and elements © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc. (s19)

---- 新しく取り組む相手はどうやって見つけ、コンタクトを取るのですか?

赤司 : 私から相手のホームページにアクセスしてメールを送るケースは沢山あります。私たちは知っているけれど相手は知らないケースは多々ありますから。今回のエキジビションで展示されているジャクソン・ポロックスタジオ(Jackson Pollock Studio)やアン・ヴァレリー・デュポン(Anne-Valerie Dupond)はそうですね。「一緒に何かやりませんか」というこちらのメッセージに相手が興味を持てば返信が来るし、興味がなければ来ない。そういう意味で世界はどんどん狭くなっていて楽しいです。もちろん海外からのリクエストも届きます。NYの若手アーティストが多いですね。彼らはストレートにメディコム・トイを通じて有名になりたいと言ってきて、それで世界に一緒に出て行けるというのも楽しいし、私たちも興味があればジョインします。

Anne-Valerie Dupond

よく驚かれるのですが年2回開催されるデザインフェスタへは毎回行っていて、出展している約5,000のブースをすべて回ります。毎年一人か二人、信じられないような才能の持ち主が現れてくるんです。その中で私が懇意にして一緒にものを作っている若いアーティストたちの中には、1年前まで無名だった存在でも商品を出すと10万個とか売れちゃうような方も出てきます。彼らが潜在的に持っているポテンシャルや彼らを支えている熱烈なコミューンのような存在がSNSを通じて、化学反応を起こしながら新しいプロダクトやコンテンツを生み出していく。それがどんどん拡大していくのを見るのは本当に楽しいですね。自分が信じた才能を世に問えること、それに対して作家が作品で答えること、それにマーケットが呼応すること。それは、やっていて楽しくて仕方がないですね。今回、「MORRIS」というキャラクターで出展しているひなたかほりさんもその様な中で見つけたアーティストのおひとりですが、この1年ほどですっかり有名になって海外からもさまざまなクリエイションのオファーが来るようになっています。

右:ひなたかほり「MORRIS」
© KAORI HINATA
© MAMES

---- 今後、挑戦したいことは何かありますか?

赤司 : うーん・・・そうですねー。うーん、何だろう・・・。自分が今、考えられるやりたいことは全部やっています。私は1日1,000通くらいメールが来るんですが、出来るだけその日のうちに返すようにしているんです。それをしないと翌日また1,000通来ちゃうからなんですが。手塚治虫先生の名言に「面白いことはやらなきゃだめなんだ」っていうのがあって、手塚治虫先生の息子のようなつもりでそれを実践してます。

プロフィール

赤司竜彦(株式会社メディコム・トイ代表取締役社長)
東京都出身。1996年に株式会社メディコム・トイを設立。特撮、アニメ・コミック、映画等のキャラクターフィギュアを企画製造。2000年、自社オリジナルブロックタイプフィギュア「KUBRICK(キューブリック)」、2001年にはクマ型ブロックタイプフィギュア「BE@RBRICK(ベアブリック)」を発表。国内外のアーティスト、ブランド、企業などとのコラボレーションを多彩に展開している。アパレルやインテリアなど多岐に渡る事業を展開中。

BE@RBRICK TM & © 2001-2019 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.

インタビュー・文=野田 達哉(Tatsuya Noda)
撮影=瀬田 秀行(Hideyuki Seta)
編集=FASHION HEADLINE

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