9月15日(土)に表参道・青山・原宿にて一夜限り開催される「VOGUE FASHION'S NIGHT OUT 2018」。東京での開催は今年で10回目となります。今回、表参道ヒルズ 本館B1Fにその日だけ出現するフォトスポットを手掛けるのは、世界中で活躍する今注目の若手クリエイティブユニット Wade and Leta。2人はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、アートディレクション、グラフィックデザイン、フォトグラファーなど幅広い分野で活動しています。
ラグジュアリーブランドのキャンペーンヴィジュアルの制作からオピニオンリーダーとして世界中の講演会に招かれるなど、夫婦でタッグを組み活躍している彼らのクリエーションについて、日本に滞在中のLeta Sobjerajskiにインタビュー。
---- アートやクリエイティブな世界への興味はいつ頃からですか?
幼い頃から絵を描くことが大好きでした。10歳でTVアニメの「セーラームーン」や「ドラゴンボールZ」を初めて見てその世界にはまってしまい、ひたすらアニメキャラクターを描き続けていました。さらに12歳の誕生日では、Photoshop 7.0を買ってもらい、スキャンした自分のドローイングをPC上で色つけしていました。中学校・高校ではアート、建築、ドローイングの授業を受け、高校3年生ではページレイアウトの授業の卒業制作として自分でデザインした本を創り上げました。その頃から、デザインに関わる仕事に興味を持ち始めましたね。


---- Letaさんは、現在は旦那さんであるWadeさんと共同でアートディレクション、グラフィックデザインなどを制作し、様々な分野で2人のセンスを融合させていますよね。今までのキャリアとWadeとの出会いについてお話ください。
学校卒業後は、まずテレビや広告向けのモーショングラフィック制作会社に入りました。仕事内容は好きになれそうな内容だったのですが、大きなチームで連携して制作することにクリエーションの限界を感じていました。3つデザインスタジオで経験を積んだものの、どのスタジオにいても「個性」を表現できないように感じてしまい、独立を決意しました。その後Wadeと出会い、彼とアイディアを話したり、一緒に創ったりしているうちに、ポジティブでオープンマインドな性格にもなってきました。そして、彼も独立した後に2人でユニットを組み、今では彼と一緒に色々なことにチャレンジできています。
---- Wadeさん との制作において、どのように役割分担して作品をつくっているのですが?
Wadeは私よりもグラフィックデザインが得意です。またタイポグラフィやブランドのメッセージを考える等のブランディングセンスに長けています。一方、私は全体の構成や色のバランスについて考えていきます。彼の戦略的な思考と、私のエモーショナルな思考をかけ合わせた作品づくりをしています。
---- 彼と初めて行ったプロジェクト「Complements Project」について教えてください。
私たちが出会ってすぐの頃はWadeがデザイン会社に勤め、私はフリーランスとして自宅で仕事をしていました。まずは一緒に創作活動をしたいと思い、週1~2回ほど時間がある時に、2人のポートレイトを住んでいるアパートで撮影し始めました。そのほとんどが馬鹿げたユニークなポーズを身近な小物を使いながら撮影しているポートレイトなのですが、Instagramにアップしたところ、ものすごい反響がありました。
ポートレイトを見た人々が写真から私たちの『エモーション』を感じてくれ、2人の関係性やモチベーションに励まされたというリアクションが日に日に増えていきました。


---- 作品を制作する時は、どのようにアプローチするのですか。
お店で買い物をしている時に何か面白い形や構成を見て発想が浮かぶ時もあれば、スケッチをしながら自分の考えを練りあげることもあります。スケッチというのは、まず頭に浮かんだ質問を書き、それに自問自答しながらスケッチを書き、答えを導き出していくという方法です。
また独立してすぐは、実際に色々と素材を使って実際に制作してみないと完成形が想像できなかったのですが、様々なクライアントワークを経て、今ではスケッチで最終的な落とし込みが想像できるようになりました。


---- 今回のFASHION'S NIGHT OUT で制作するフォトスポット「Utopian Zen」は、どのようにアイディアが生まれたのでしょうか?
まずフォトスポット自体はそんなに広くないスペースですが、『全く異なる空間を生み出し、アートで人々を未知なる世界に連れて行けるような場所』にしたいと思いました。Utopia(理想的な空間)にZen(禅)の解釈を加えつつ、グラフィックの世界で表現しました。
モチーフは、京都・龍安寺と鎌倉・明月院からインスピレーションを受けています。床面にはモノクロの線が龍安寺の枯山水のような波紋を描き、背景の円は明月院の窓からインスピレーションを得ています。日本庭園の要素である石、植物など自然界のものに、私の好きな1980〜90年代の幾何学模様をミックスしています。
レイヤーやグラフィックを重ねることで、なにか非日常的な世界を表現しているので、みなさんも実際に来てみて様々な角度からイマジネーションを膨らせて楽しんでいただけると嬉しいです。


<Letaさん Instagramより>
---- 日本に興味を持ったきっかけ、といま実際に日本に住んでみてから感じることを教えてください。
先ほど話した通り、テレビアニメを通して日本に関心を持ってました。加えて、大学教授だった母が交換留学制度を設け、日本人の学生を私の家に招いたことをきっかけに、日本に対してさらに理解を深めたいと思うようになりました。また今回3ヶ月日本に住んでみて、改めて日本人のあらゆるものに対して感謝・尊敬の念を抱いている姿勢に驚きました。比べてしまうとニューヨークでは、騒音も多いし、混雑しているし、自分のことばかり考える人ばかりです!
---- 表参道の街は、Letaさんにとってどのような印象がある街ですか。
表参道・原宿エリアはとても好きで、よく来ています。デザイン・ファッション・アートのハブになっている場所だと感じていて、この街にいる人のファッションを見るだけでも刺激をうけます。


---- アートを通して、何を伝えていきたいですか?また今後やってみたいことを教えてください。
人々に『エモーション』を与えたいですね。私たちの活動を通して、何かみなさんの琴線に触れられたらと思っています。私たちの最終的なゴールとしては、今の活動を続けつつ、活動の場所を広げたいと思っています。
また最近、制作以外にも、各国で開催されるパブリックスピーキングにゲストとして呼ばれることが増えました。10月以降にオーストラリア、ロシア、カナダなどで講演を行います。自分たちの好きなことで活動しながら、周りの人々にも何かを感じてもらえればうれしいですね。


プロフィール
Wade Jeffree & Leta Sobierajski
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に夫婦でデザイナー兼アートディレクターとして活動。ひねりの効いたセンスとカラフルなデザインを表現する。HAPPYでエモーショナルなヴィジュアルを制作するために、写真やアートだけに留まらず、ファッション、テクノロジーと伝統的なグラフィックデザインなど様々な要素をミックスしている。
Instagram
Wade Jeffree @ wadejeffree
Leta Sobierajski @ letasobierajski
文=倉田佳子(Yoshiko Kurata)
撮影=田川優太郎(Yutaro Tagawa)