2020年突入から今日までの約半年間。表参道ヒルズから徒歩10分圏内エリアを中心に、とある人物が仕掛ける不思議な空間が生まれては消えているのをご存じでしょうか。
その空間、そして活動の名は「SKWAT(スクワット)」。2009年、24歳にして同世代の仲間たちと裏原宿にフリースペース「VACANT」を設立すると、一躍カルチャー界の注目人物に...現在は設計事務所・DAIKEI MILLS代表としてこの街ではもちろん、世界的にも活躍中の中村圭佑さんによるプロジェクトです。
彼は今、「SKWAT」という活動を通して、この街で何をしようとしているのでしょうか。インタビューしました。


プロフィール
2009年、20代前半の仲間たちと共に裏原宿のフリースペース「VACANT」を設立。前衛的アーティスト集団・Chim↑Pomを招いたオープニングイベントを皮切りに、この"空っぽ"の箱で様々な化学反応を起こし続けた。2011年に立ち上げた設計事務所・DAIKEI MILLSでは世界に活動の幅を広げながら、CIBONE、6(ROKU)、avex、Artek Tokyo Storeなど、この街でも様々な空間を設計。そして2020年、原宿や青山の空きスペースを"占拠"し、カルチャー・アートの発信拠点とする新たな活動「SKWAT」を開始
---- 原宿や青山の空きスペースを"占拠"するプロジェクト「SKWAT」を2020年にスタートしました。一体どんな活動?
中村 : 「SKWAT」の語源は「SQUAT(=占拠)」。テナントの入れ替わり期間などに発生する遊休物件を"占拠"し、ポップアップ的にカルチャーの発信拠点をつくりだす活動です。アイデアの元はイギリスやドイツで70年代から存在する、放棄された土地や建物(通常は住居)を占拠する行為「SQUAT」ですが、それを現代の日本で可能な形にアップデートして落とし込んでいます。
---- 今もどこかを"占拠"中?
中村 : 現在は南青山・みゆき通り沿いの商業施設「ザ ジュエルズ オブ アオヤマ」の一角を占拠中です。高級ブランドが密集するエリアで200平米の面積を使い、建築や写真、ファッションなど、幅広い分野から1000タイトル以上のアートブックを揃えた"地域の図書館"のような場をつくっています。大都会の喧噪から一瞬離れ、ゆったりと流れる時間の中、文化的な刺激に浸っていただけたら嬉しいです。


2020年7月現在、"占拠"している南青山の空間。ラグジュアリーブランドが密集するエリアの中、スケルトン空間に敷かれた赤い絨毯が目を引く。階段をのぼると...


200平米のスペースに、レアなアートブックがずらり。購入はもちろん、椅子に腰掛けて読むだけでも。
---- 今、この街で「SKWAT」を始めようと考えたのはなぜ?
中村 : 国立競技場に近いこのエリア一帯では、五輪後に遊休物件が増える...ネガティブな表現をすれば「空き家問題が発生する」と予測したことです。それならば、その空きスペースを活用し、この街ならではのクリエイティブかつカルチャー性を孕む何かができないか、そんな発想でした。僕が代表を務める設計事務所・DAIKEI MILLSは、物件のポテンシャルを最大限に活かすような、場の文脈をしっかりと読み取った空間デザインを得意としているので、時間をかけずとも価値のある場を瞬時につくり、時期が訪れれば即退去するという軽快なアプローチも可能。そんなスキルを活用して、深く関わり続けているこの街に新しい可能性を生み出せればという想いでいます。


表参道ヒルズに構えるジュエリーブランド「Hirotaka」旗艦店も、DAIKEI MILLSによる設計。経年変化が美しい真鍮が多用されており、シンプルながら生命力を感じる空間にデザインされている
---- しかし、活動開始とほぼ同時に緊急事態宣言が発令されました。影響は?
中村 : もちろんパンデミックや五輪の延期は予想外でした。しかし、結果的にはその影響で遊休物件はすでに増え始める状態となっているので、やるべきことは変わりません。発生してしまった空きスペースを僕らが"SKWAT"することで、共通の価値観を持った人が繋がり、何かが生まれる空間にする。もちろんCOVID-19とは今後もしばらく付き合っていく世の中な訳ですから、その新たな生活スタイルにもフィットした新たなアプローチは意識しています。そうやって場の価値を改めて高めることが、街にとってはもちろん、物件を持つオーナーさんにとっても必ず良い働きになると信じています。


SKWAT第1弾の舞台は、神宮前のクリーニング店の跡地(写真中央の青い建物)。現在はすでに退去済み


内部では、廃棄予定のアートブックがオール1000円で、ファッション業界に熱いファンを持つテキスタイルブランド「Kvadrat」の廃盤になったファブリックが低価格で販売された


DAIKEI MILLSが空間設計を手掛けた青山のライフスタイルブランド「CIBONE Aoyama」も、移転クローズ前の2週間を自ら"占拠"。グリーンのカーペットが敷かれ...


辿り着いた空間では、CIBONE Aoyamaで販売されていたインテリアに囲まれながら、人気カフェのドリンクやフードを楽しむこともできた
---- さらに現在、COVID-19による社会のオンラインシフトの流れを受けて、「オンラインでのSKWAT」計画も進んでいるとのこと。
中村 : Google MAPで見つけた実際の遊休地を、オンラインの世界の中で「仮想占拠」する試みです。 リアルな遊休地に仮想で建築物をつくり、その中に僕らが理想的に思うインテリア空間を描き作り上げる。テーブルやソファ、照明、アート、ファッションアイテム、植物など、そこに描かれているすべてのアイテムは現実にも存在する商品で構成されており、そのアイテムをクリックすると購入することができるという体験型のEC機能です。COVID-19以降、バーチャルでの様々な可能性が取り沙汰されていますが、あくまで実際に存在する街をベースに仮想占拠することで、オンラインとオフラインの境界を溶かし、「この街で買い物をした」という価値を演出できればとも考えています。


実際に存在する原宿の遊休地を、オンライン上で"バーチャルSKWAT"。空間内のインテリアは全て購入可能。絵はDAIKEI MILLS制作。
---- では、中村さんにとって、表参道エリアが持つ価値とは?
中村 : 価値観を変え、新しい定義をも作りだせる場所であることです。
---- 最後に、もし、表参道ヒルズの一角をSKWATするとしたらどのような空間が生まれる?
中村 : 表参道ヒルズは、表参道のゆるやかな坂道に合わせ施設内の床もスロープ状で構築されているように、屋外と屋内の境界をぼかし施設内自体も街の延長であるかのような設計になっていますね。また、渋谷区立神宮前小学校も隣接しています。そんな背景を踏まえて、「商」と「住」というこれまでの施設キーワードに「学」を足す。来訪者にとっての学びの場であり、同時にそこが街の中の憩いの場となり得るような公共性の高い一角をつくり、表参道ヒルズがより街に溶け込み、来訪者との距離をより縮ませるのはいかがでしょうか。私たちは、どこを"占拠"するにせよ、心の通った温かな取り組みこそが、今のこの悲痛な状況や人々の心理状況に作用し、街のエネルギーとなってくれると信じています。
中村さんの「VACANT」「DAIKEI MILLS」での活動について詳しく知りたい方は、OMOHARAREALのインタビューも併せてご覧ください。
文=黄 孟志(Takeshi Koh)
撮影=前田勇輝(Yuki Maeda)
編集=OMOHARAREAL
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