聞きしに勝る過密スケジュールをこなす安藤忠雄さん。猛スピードで撮影を終えたら、このまま新幹線で本拠地である大阪に移動しなくてはならないそう! タクシーに乗り込む安藤さんに、東京駅まで同行がてら取材を続行させてほしいと直談判。ご快諾いただいて、車中取材スタートです。
公共性を失ったら、建築は終わりです。
そのくらい大事なことだと思いますね。(安藤)
公共性を失ったら、
建築は終わりです。
そのくらい大事なことだと思いますね。(安藤)
安藤 : 行きましょうか。よいしょ、もちょっと詰めよか?
---- あ、いや、そんなに詰めなくて大丈夫です(笑)! 表参道という街自体はお好きですか?
安藤 : 60年代、70年代の頃から、それこそ同潤会にあったギャラリーにはよく行っていましたから。あの頃、坂道や裏通りの細い道をうろうろとしたりした経験を、〈表参道ヒルズ〉に込めたというところはありますよ。今はずいぶん外国人の方も多いけれど、建物をぐるりと回るゆるやかなスロープを、行ったり来たりしながら買い物してくれてるようで、嬉しいですよね。
---- 〈表参道ヒルズ〉に限らず、安藤さんはかなり大規模な建築を建ててこられています。街並みを変えてしまうような大きなものを設計する。建築家という生業のそういう部分を、怖いと感じることはないんですか?
安藤 : そりゃあ怖くないところまで、考えに考えるもの。その建物ができて街がどうなっていくか、施主の話を聞き、地権者の話を聞き、さらに自分も考えまくるからね。
---- いい建築にとって大切なものとは、なんでしょうか?
安藤 : よく話すのは、丹下健三先生の設計で1958年に完成した香川県庁舎のこと。それまでの庁舎というものは、普通の人は入れなかったのを、丹下先生は「建築というものには公共性がなければいかん」と思われたのでしょう、誰でも中に入れる、自由な建築をつくり出した。あの建築は、丹下先生の創造力はもちろんのこと、当時の金子正則知事が、その思想を十分に理解したからこそ実現したんですよね。建築は、建築家・施主・工事する人・使う人の4者がバランスよく存在しないとできあがりません。そういう意味では、〈表参道ヒルズ〉もよくできていると思います。
---- 先ほどから"公共性"というキーワードがよく出てきますね。
安藤 : はい、いろんな公共性があると思いますが、今まであったものを生かすことは建築の公共性だし、人が集まる場所をつくることも公共性です。商業施設で言うならば、一回行ったらまた行ってみようという気持ちになれることは、公共性につながる。集まったその場所で、ワクワクすることができるということ自体がね。〈表参道ヒルズ〉の中央の吹き抜けをいろんな風に使っているでしょ。それを楽しみに人が集う。そこには、公共性がある。公共性は、建築家の側で用意できるものもあるし、使う人が工夫して生み出すものもある。でも、公共性を失ったら、建築は終わりです。そのくらい大事なことだと思いますね。
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