それにしても安藤さん、撮影中から歩道橋を駆け上がったり、カメラより先に小走りで進んだり。とても75歳とは思えない元気と活気に満ちたご様子に頭が下がります。そう尋ねると、「胆のうと胆管と十二指腸と膵臓と脾臓、全部とってしまった」と、驚くような発言が----。
胆のうと胆管と十二指腸と膵臓と脾臓、
全部とってしまった(安藤)
胆のうと胆管と十二指腸と膵臓と脾臓、
全部とってしまった(安藤)
---- そんな大手術をなさったんですか。
安藤 : 2009年と2014年にね。今、地球上にそんなに内臓のない人間はめずらしいそうで(笑)。でも元気ですよ。3年経ったけど、一回もしんどいことはないです。
---- えっと......大丈夫なんですか !? その部分ってどうなってるんですか?
安藤 : そりゃあ、ないままですよ(笑)。薬を3つ4つ飲んだりはするけれども、それだけ。
---- そこまでの大手術に、恐怖はありませんでしたか?
安藤 : 手術前日の夜は対談があって、その後9時までパーティーに出て。それで次の朝8時から12時間の手術をしましたからね。ユニークでしょう(笑)? 病気はやっぱり、気のものですね。今日も今から大阪へ帰りますけど、明日はあっちで仕事して、明後日はまた朝から東京ですからね。国立新美術館で会議やら、取材やら。

---- 国立新美術館の話が出ました。9月27日から、開館10周年の個展、「安藤忠雄展--挑戦--」が始まりますね。
安藤 : 館の方の目標としては、12月18日までの会期中に15万人来てほしいと。たいそうな目標ですから、それを達成するには、私自身が同潤会アパートを見て感動したときのような、丹下先生の香川県庁舎や国立代々木競技場に興奮したときのような体験をしてもらわないといけません。それには大胆にいかないと、というわけで、今、頑張っています。展示は住宅作品100軒。それから、〈光の教会〉を原寸大でコンクリートでつくります。
---- 原寸大! あの名建築がそっくりそのまま再現されるんですね。どこに建つんですか?
安藤 : 建築法上は増築というかたちで、野外展示場に建てます。〈光の教会〉は1989年にできましたけれど、そもそもが教会ですから、信者さんへの配慮などもあって、なかなか見学できません。それならば建ててしまえと。元々私は、あの十字架のスリットの部分から光と風が入ってくるといいと思っていたけれど、実現せず、ガラスを入れました。でも今回建てるものは、ガラスなしでやります。自分が最初に思い描いたものが、初めて実現しますね。

光の協会 撮影:松岡 満男
---- 2008年の「TOTOギャラリー・間」での個展でも、〈住吉の長屋〉の原寸展示が話題になりました。あちらは一部コンクリート打設でしたが、今回はさらに踏み込んですべてを再現するんですね。
安藤 : そう、空間丸ごとを体験できると、受け取るものが全く違うと思います。さて15万人はどうか......。私もこれは頑張らないとと、雑誌や新聞の取材を40社ほど受けました。「どうして建築家になったんですか」ってなんども同じこと聞かれて、「それさっき答えた」「それウチじゃないです、もう一回お願いします!」って。ハッハッハ!
---- ......取材する側にとっては冷や汗です。〈国立新美術館〉は黒川紀章さんの晩年の作。今回、黒川建築と安藤建築が共演することになりますね。
安藤 : 私からすると、黒川さんは大先生。1960年代に、20代でデビューしてメタボリズムを率いた頃の黒川さんは、それは素晴らしかった。あの人の顔を雑誌の表紙で見て、なんて格好いい、賢そうな顔をした人やろうと惚れ惚れしたもんです。〈国立新美術館〉は、黒川さんの作品のなかでもとてもいい作品だと思います。あんなにのびのびとした美術館は、ほかにそうない。そこで展覧会をするのですから、それはもう、うれしいですよ。
---- ありがとうございました!
安藤 : あっ、運転手さん、ここでいいです。ハイありがとう。新幹線に間に合うか......? 間に合うね。じゃあ行きます。また!
安藤忠雄 プロフィール
1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。環境との関わりの中で新しい建築のあり方を提案し続けている。代表作に「六甲の集合住宅」「光の教会」「ピューリッツァー美術館」「地中美術館」など。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年より東京大学教授、03年より名誉教授、05年より特別栄誉教授。著書に「建築を語る」「連戦連敗」など。
展覧会概要
展覧会名 展覧会名
国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展-挑戦-
会期 会期
2017年9月27日(水)〜 12月18日(月)
※金曜日・土曜日は20:00まで
開館時間 開館時間
10:00~18:00 ※金曜日・土曜日は20:00まで / 9月30日(土)、10月1日(日)は22:00まで / 入場は閉館の30分前まで
10:00~18:00
※金曜日・土曜日は20:00まで
※9月30日(土)、10月1日(日)は22:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場 会場
お問い合わせ お問い合わせ
03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ホームページ 展覧会ホームページ
文=阿久根佐和子(Sawako Akune)
撮影=永禮 賢(Satoshi Nagare)
編集=佐々木直也(Naoya Sasaki)
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2025.08.07
OMOTESANDO CULTURE WEEKEND
毎週末、さまざまなカルチャーイベントを開催! ファッション、アート、デザイン、食、音楽などについて、国内外のアーティストやショップ、メディアが一堂に集まり、来場者に向けて発信するイベントを週末ごとに開催します。 Art Culture Street. -SUMMER JAM- 4人組バンド・CHAIの元メンバーで、現在は画家、ファッションディレクター、作詞家などでマルチに活躍するクリエイターYUUKIが主催するアートと様々なカルチャーが融合したイベントを開催します。 開催日:8月16日(土)~8月17日(日) 時間:11:00~20:00 ※最終日のみ18時まで 主催:株式会社EmpaC インスタグラム:@artculturestreet ■YUUKI プロフィール4人組バンド・CHAIの元メンバー。CHAIではベース演奏に加え、作詞やアートワークなどを担当。2024年3月のバンド解散後には、アパレルブランド「YMYM」にてアパレルやライフスタイルグッズを手掛けるほか、アートイベント「Art Culture Street.」の主催や、作家としての創作活動など、これまで以上にマルチなクリエイターとして精力的に活動中。 POST EDIT ファッションという軸を持ちながら、編集的視点からライフスタイルやカルチャーを再構築する2日間限定のポップアップイベントです。ファッション、フード、アート、音楽、出版など、多様なジャンルから選ばれたブランドが出店します。空間全体を「時代が求める編集 = POST EDIT」というテーマで構成し、来場者に新たな価値との出会いや発見を提供します。会場内は各ブランドの世界観を体験いただける設計となっており、販売や、展示にとどまらず、出店者・来場者同士の交流の場としても機能し、クリエイターが共に創り上げる体験型の文化発信拠点を目指したイベントを開催します。 開催日:8月23日(土)~8月24日(日) 時間:11:00~21:00 ※最終日のみ18時まで 主催:COLORS.inc 関連ページ:https://www.instagram.com/post____edit/ ※8月24日(日)は「原宿表参道元氣祭スーパーよさこい2025」開催に伴う交通規制のため、11:00~16:30の間、表参道ヒルズの駐車場はご利用いただけません。詳しくは、こちら OMOTESANDO WART FAIR ファッションや音楽カルチャーの感性を宿すナチュラルワインのセレクターが地下空間に集い、それぞれの信念で選んだワインを提案する初開催のイベント。ワインの存在を「文化を育てる業置」と位置付け、音楽、時間、空間、表現、そして共有することの歓びなど、様々な要素が結びつくような体験を提供します。 開催日:8月28日(木)~8月30日(土) 時間:8月28日(木)・29日(金)16:00~21:00、8月30日(土)12:00~21:00 主催:ログズ株式会社 関連ページ:https://www.instagram.com/wart_tokyo/ ※内容は予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。※各イベントでのお買上げについては、駐車券サービスおよびヒルズポイント付与の対象外となります。
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